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介護 処遇改善加算 障害福祉

パートの時給向上を実現する処遇改善加算の活用法【社労士が解説】

この記事では、福祉・介護職員等処遇改善加算および介護職員処遇改善加算について解説します。

令和6年6月から処遇改善加算制度が一本化され、旧制度の時と比べると少しだけ運用しやすくなりました。

とはいえ、まだまだ「どのように分配すれば良いかわからない」「効果的な運用方法について教えてほしい」といった声が聞かれますので、今回は「パート職員に支給する処遇改善加算」にテーマを絞って説明していきます。

この記事でわかること

・パート・アルバイト職員への処遇改善加算の分配方法

パート・アルバイト職員への処遇改善加算の分配方法

パート・アルバイト職員に対して処遇改善加算を分配する場合、下記のような方法で支給することができます。

処遇改善加算の分配方法(パート・アルバイト)

  • 基本給(時給)
  • 手当
  • 賞与

それでは、上記の分配方法で分配する場合の注意点とポイントを見ていきましょう。
既に上記の方法で分配されている事業所様については分配方法の確認としてご参考にしてください。

時給で分配する場合

処遇改善加算を時給で分配する方法は、パート・アルバイトに分配する方法としては最も一般的です。

分配の例

【東京都の最低賃金:1,163円(令和6年度)】※最低賃金改定後に雇用した従業員場合

1,163円(最低賃金のため会社負担)+137円(処遇改善加算による上乗せ)=1,300円/時給

注意ポイント

新たに従業員を雇い入れる場合は必ず最低賃金を超えている部分に上乗せしてください

例外(最低賃金にも含められる場合)

【東京都の最低賃金:1,113円(令和5年度)】※令和5年の最低賃金改定後に雇用した従業員の場合

1,113円(最低賃金のため会社負担)+37円(処遇改善加算による上乗せ)=1,150円/時給

◆その後、令和6年になり最低賃金が1,163円へ上昇

1,113円(最低賃金のため会社負担)+50円(新たな最低賃金との差額)+37円(処遇改善加算による上乗せ)=1,200円/時給

ココがポイント

 従前の最低賃金と新たな最低賃金との差額については処遇改善加算から分配可能です

ただし、処遇改善加算の目的等を踏まえると、最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行うことが望ましいとされているので、処遇改善加算の原資に余裕がある事業所については、直近の最低賃金に上乗せした額を分配額として計上することをお勧めします。

手当で分配する場合

時給以外では手当として分配する方法があります。こちらは正社員など、常勤に分配する場合と同様です。

手当として支給する場合は「処遇改善手当」や「改善手当」などの名称以外にも下記のような名称として処遇改善加算を分配することができます。

処遇改善加算の手当名称の例

✅職務手当・職能手当

健康促進手当

インフレ手当

スタートアップ手当

地域手当

注意ポイント

「インセンティブ」や「業績手当」なども名称設定も可能ですが、毎月額が変動する手当名称を付ける場合には、その手当が支給されない月が無いことに注意してください
【例)「業績手当」ひと月あたりの最低保証額を1,000円に設定する】

一方で、労働と直接的な関係が薄く、労働者の個人的な事情に左右される下記のような手当名称は付けられませんので、ご注意ください。

処遇改善加算の手当名称にしてはいけないNG名称例

時間外労働手当(残業手当、固定残業手当)

深夜労働手当、休日労働手当

通勤手当

家族手当・扶養手当

住宅手当

賞与で分配する場合

こちらも正社員、常勤に分配する方法と同様の方法です。
正社員と異なる点としては、就業規則や賃金規定上に「賞与は正社員にのみ支給する」などの記載があると、実態との整合性が取れていないと指摘を受けてしまう場合があるので、注意してください

支給額についてはキャリアパスシートや人事考課によって支給することが望ましいですが、賃金改善実施期間の最終月に処遇改善加算の分配残りがある場合は、分配残りの調整として支給することもできますので、年度の途中に退職者が多かった場合には賞与として調整支給することができます。

注意ポイント

一般的な障害福祉・介護事業所は「夏季賞与」+「冬季賞与」+「賃金改善実施期間の最終月の賞与」の年3回に分けて処遇改善加算を賞与として分配することが多いですが、『4回以上の賞与』については「賞与」ではなく毎月の「報酬」とみなされてしまうため、注意が必要です

もっと詳しく

令和6年6月以降の新処遇改善加算は、全額を賞与(一時金)で充てることはできません。
旧ベースアップ等支援加算をしていなかった事業所が新たに加算を算定する場合は、旧ベースアップ等支援加算の2/3相当額以上を、ベースアップ等支援加算を従前より算定していた事業所は新処遇改善加算の区分Ⅳに相当する額の1/2以上は基本給・毎月支払われる手当で分配する必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
パート・アルバイト職員に分配する処遇改善加算の分配方法を工夫することで、従業員のモチベーション向上の要因になったり、求人票に記載することで、求職者からの魅力的な事業所だと思ってもらうこともできます。
「処遇改善加算をなんとなく分配しているな…」と感じている事業所様は、ぜひ本記事の内容をご活用いただければと思います。

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宮本泰光

神奈川県で活動している30代の社会保険労務士。 人事労務歴は10年以上、障害福祉・介護事業所を始めとした幅広い業界の労務管理をサポート。 職場環境改善における最も重要なテーマである「人間関係」に関するアドバイス・コンサルを得意とする。 障害福祉・介護職員処遇改善加算や各種助成金の申請など、労務管理の幅広い業務に対応致します。

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