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労務 心理

【労務に関する心理傾向】内集団バイアスと黒い羊とは?

心理学的な観点から労務管理を見ていくと色々なことがわかります。今回は「内集団バイアス」と「黒い羊」について解説します。

内集団バイアスとは?

そもそも「内集団バイアス」とはどのようなものなのでしょうか。
まず「内集団」とは自分が所属していると自覚している集団のことを指し、自分が所属していない方の不特定多数の集団(個人)を「外集団」といいます。人は、内集団に対して好意的な態度を取る傾向があり、このことを「内集団バイアス」と呼びます。

例えば、自分が所属している集団(内集団)のメンバーはそれ以外の集団(外集団)のメンバーよりも人格や能力が優れていると認知し、優遇していると感じることはありませんか?
この傾向は実は自分だけではなく、全ての人が同じような心理傾向になるのである意味自然な感情とも言えます。
しかし、内集団バイアスにより、内集団以外の他者を低く見る感情が強くなってくると、偏見や差別を生んでしまうこともあるのです。

内集団バイアスの例

若手(新卒)社員 VS ベテラン(高齢)社員

「今どきの若いものは…」 「老害…」というフレーズは皆さん聞いたことがあるかと思います。
この思考にも、「内集団バイアス」が働いています。

自分が所属する集団(昭和世代)(平成世代)のメンバーである人だから優遇するという心理作用です。
世代間の帰属意識が、過度な差別意識の形成という弊害に繋がってしまう傾向が職場環境においては問題視されているところです。

男性社員 VS 女性社員

職場においては、性別間におけるトラブルも頻繁に発生しているかと思いますが、これにも「内集団バイアス」が関連しています。

近年、女性活躍推進が行われている中で、特にその傾向は顕著ではないでしょうか?
例えば下記のようなステレオタイプによって、自己の集団が独自の解釈をして対応してしまうケースも目立ちます。

  • 「男性は介護や育児に向いていない」と言われると、「確かにその通りだ」と思ってしまう 
  • 「女性は数字が苦手だから、理系の大学は難しい」と言われると納得してしまう
  • 「男性は総じてデリカシーに欠けるから、繊細なことは話せない」と思ってしまっている
  • 「女性は気分によって仕事を選ぶので、責任が重い仕事を任せられない」と思ってしまっている

これら結果として、性別と結びついたネガティブなイメージを受けると、無意識にイメージ通りの対応や行動をしてしまったり、相手の本質を知る前に勝手にイメージを押し付けてしまう傾向もあります。

当然、全ての人が「イメージ」に該当する訳ではないので、勝手にレッテルを貼られた相手は反発するでしょう。そうした「性別間の負のスパイラル」が女性の社会地位の向上や、男性の社会での生きづらさに繋がってしまっているのです。

黒い羊効果とは?

「内集団バイアス」に似た心理用語に、「黒い羊効果」というものがあります。
これは、好ましくない身内は好ましくない他人より低く評価される心理傾向のことです。

つまり、「内集団バイアス」が外集団よりも内集団を高く評価するのに対し、「黒い羊効果」は内集団の中にいる特定の人物を、外集団にいる好ましくない人よりもさらに低く評価してしまうのです。

具体的な事例

「内集団バイアス」では、自分が所属する集団のメンバーに欠点があったとしても、「仲間なんだから大丈夫!」とフォローしてくれたり、多めに見てくれたりします。ところが、「黒い羊効果」はその逆のパターンになってしまうことを意味します。

具体的な例としては、30代40代が多い職場のとある営業部で、その部署は「仕事を速くこなすこと」をウリにしています。そこに、久しぶりに新卒で入社してきた20代の男性社員が現れました。配属先は営業部となりました。

もちろん、最初は20代の男性社員の指導、サポートのため、部の全体的な仕事の速度は一時的に下がります。
そこまでは、部署のメンバーも想定内のことで、フォローを入れながら対応してくれており、仕事の速さも気にならないでしょう。

3か月、6か月と経ってその20代の男性社員は仕事を一通り覚えることができました。しかし、「仕事の速さ」という部分では、男性社員のマイペースな性格も相まって、その部署のスピード感とは大きく異なるものでした。

するとどうでしょう、その部署は「仕事を速くこなすこと」をウリにしている集団であるため、その男性年齢差も相まって、社員が「仕事をこなすことが遅い」ことに対して、異常に気にし始めてしまうのです。

そして、他の部署に20代の男性社員と同等の仕事の速さの社員がいたとしても、その人の事に対しての評価は低くならないのにも関わらず、自分が所属している部署にいる20代の男性社員に対する評価は非常に低くなってしまうのです

さらに、1人がその男性社員を低く評価すると、他の内集団のメンバーも同様に男性社員を低く評価し始めます。
そして場合によっては、ハラスメント(いじめ)のような現象が起きてしまうこともあるのです。

経営者・事業主の皆さまにつきましては、このような心理的な傾向を知っているだけで「もしかして自分も今そういう行動(言動)をとってしまっているんじゃ…?」と思い返したり、他の従業員同士での対人関係の悩みを解消してあげたりすることができる場合があります。

このブログでは職場で陥りがちな心理的傾向にもスポットを当てていきますので、ご参考になさってくださればと思います。

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宮本泰光

神奈川県で活動している30代の社会保険労務士。 人事労務歴は10年以上、障害福祉・介護事業所を始めとした幅広い業界の労務管理をサポート。 職場環境改善における最も重要なテーマである「人間関係」に関するアドバイス・コンサルを得意とする。 障害福祉・介護職員処遇改善加算や各種助成金の申請など、労務管理の幅広い業務に対応致します。

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